「力入れてますか?」と聞かれることがあります。
「入れています」と答えると、「全然感じないんですが」と言われます。
入れていないと思われているのか、効いていないと思われているのか。どちらも少し困りますが、実はこれが正しい状態だったりします。
武道で繰り返し問われること
大東流合気柔術を長年稽古してきました。
武道で熟練した人が使う言葉があります。「入る」「乗る」「繋がる」。これは単なる接触のことではありません。
力で相手を動かそうとすると、相手は踏ん張り、力がぶつかります。でも接触した瞬間に「繋がる」と、自分の重心移動だけで相手が自然に動き始める。相手を「外側の物体」として扱わなくなる——というか、接触した瞬間に、相手を含めた一つの系として感じる状態になる。
だから「押している感覚」が薄くなる。「自分の体を動かしたら相手も動いた」という感覚に近くなります。
施術も非常によく似ています。
「繋がった」ときに起きること
触れた瞬間に、どこへ力が逃げているか。どこで引っかかっているか。どこが抵抗しているか。
これが身体感覚として伝わってくるとき、局所だけを押すのではなく、身体全体の張力や重心の流れを感じながら圧を通せるようになります。
その結果として患者さんから出てくる言葉が、
「押された感じがしないのに変わった」
「勝手に緩んだ」
「自然に抜けた」
です。
強い刺激を与えたわけではない。身体が防御を解いて、自然に変化した。その感覚です。
「一時的に身体システムを共有する」感覚
これをもう少し正確に言うなら、「接触によって一時的に身体システムを共有する」感覚と言えるかもしれません。
患者さんの重心・張力・呼吸・防御の出方が、自分の身体感覚の中に入ってくる。するとこちらが「どう動くか」が、そのまま相手へ伝わる。局所を操作するより、自分の軸や重心を変えた方が、相手の全体が自然に動く。
「自分が治している」という感覚とは、少し違います。むしろ「身体が何をしたがっているかを読んでいる」感覚に近い。
感じないままで変わっていく。「全然感じないんですが」——それが、うまくいっているときの正しい感想だったりします。
次回|第4回:手技療法と鍼灸——届く場所が違う
同じ「施術」でも、手技療法と鍼灸では身体への届き方が根本的に違います。その使い分けを、臨床の現場から考えます。
シリーズ:身体はなぜ変わるのか
- 第1回:「そこです」と言われる理由
- 第2回:なぜ表面だけほぐしても戻りやすいのか
- **第3回**:「押す」のではなく、「繋がる」(この記事)
- 第4回:手技療法と鍼灸——届く場所が違う
- 第5回〜第9回:続く
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療効果を保証するものではありません。


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