触れているとき、「なんか緩んだ気がするんですけど……」と言われることがあります。
「気のせいです」と答えます。
「そんな訳ないですよね?」と返ってきます。
その通りです。最初から気のせいとは思っていませんでした。
身体は防御している
痛みや不調が長く続くほど、身体は防御的になります。
力を抜けなくなる。呼吸が浅くなる。無意識に固まる。常に何かに備えている状態。
これは意志の力でどうにかなるものではなく、神経系が自動的にとる反応です。「もう安心していいよ」と頭で思っても、身体はなかなか信じません。
長く不調を抱えている方ほど、「分かってもらえなかった」経験を持っていることがあります。
説明しても伝わらない。触れてもらえない。「異常なし」と言われて帰ってくる。そういう経験が重なると、身体はさらに防御を固めます。他人に触れられることへの警戒が、施術の効果を下げることもあります。
「分かってもらえた」が防御を解く
だから私は、施術の中で「身体が何を庇っているか」を探すことを大切にしています。
触れた瞬間の抵抗。逃げる方向。呼吸。張力。
これを見ながら、身体が安心できるポイントを探していく。すると、最初は強く抵抗していた部分がふっと緩む瞬間があります。
その瞬間、患者さん自身も「あ、そこだったんだ」と気づくことがある。身体の感覚と言葉が繋がる瞬間です。
「もう守り続けなくていい」と感じるとき
身体が本当に変わり始めるのは、「もう防御しなくていい」と感じたときだと思っています。
それは説明で作れるものではありません。触れ方、圧のかけ方、こちらの身体の使い方——こういったものが積み重なって、身体が「ここは安全だ」と判断する。
だから施術は「操作する」より「条件を整える」感覚に近いのかもしれません。
身体を変えようとするより、身体が変わりやすい状態を作る。そうすると、変化は向こうからやってくる。
病院で傷ついた経験がある方、説明しても分かってもらえなかった経験がある方に、ここへ来てよかったと思ってもらえるように施術しています。それだけです。
……「気のせいです」と答えたのは、緩んだことを認めると照れくさかっただけです。
次回|第8回:なぜ施術では”考えすぎない”ことが大切なのか
頭で追うほど、身体感覚の精度は落ちます。施術者が「考えすぎない」ことの意味を、武道の経験から考えます。
シリーズ:身体はなぜ変わるのか
- 第1〜6回:シリーズ一覧はこちら
- **第7回**:身体は”分かってもらえる”と緩む(この記事)
- 第8回:なぜ施術では”考えすぎない”ことが大切なのか
- 第9回:「治す」より、”動ける身体へ戻す”
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療効果を保証するものではありません。


コメント