「先生、施術中に何を考えてるんですか?」と聞かれることがあります。
「あまり考えていません」と正直に答えると、「……大丈夫ですか?」と言われます。
大丈夫です。
「情報統合の質」という話
臨床経験を積むほど、処理できる情報量が増えるわけではないと感じています。むしろ、必要な情報だけを拾い、不要な情報を削る精度が上がっていく。
触れた瞬間の張力の変化。呼吸。重心の偏り。圧が通る方向。抜け始めるポイント。
こういった情報を、頭だけで処理するのではなく、身体全体で感じ取る。「ここをこうしよう」と無理に操作するより、「身体が変わり始める方向」が自然に見えてくる。
これが、問診に時間をかけなくても、少し動いてもらい、触れた瞬間に施術の方向が定まる理由だと思っています。
武道で繰り返し経験すること
大東流合気柔術の稽古でも、同じことが起きます。
「次はこう動いて」「ここで崩して」と考え始めるほど、動きは遅れ、力みが増える。逆に、余計な力みが抜けて身体が自然に反応できる状態になると、動きは大きく変わる。
熟練した人ほど、派手な力を使いません。接触した瞬間に相手の重心と張力を感じ取り、必要な方向へ自然に導いていく。
考えながらやっているのではなく、感じながら動いている。
施術も同じです。
「邪魔しない」という技術
「なんで外さないんですか?」と言われることがあります。
考えて当てているというより、身体の反応を邪魔しないように見ている——という方が近いかもしれません。
人の身体は、こちらが無理に変えようとすると防御します。逆に、抵抗の少ない方向を見つけられると、自然に変化し始める。
「邪魔しない」という感覚が、施術の精度に直結しているのだと思っています。
そして、そのためには施術者自身が力みすぎていないことも、大切な条件の一つです。
「あまり考えていません」は、本当のことです。でもそれは、何も見ていないということではない。考えるより先に、感じているということです。
次回(最終回)|第9回:「治す」より、”動ける身体へ戻す”
「治してください」という言葉だけでは、少し足りない感覚があります。9回書いてきて、結局言いたかったことを。
シリーズ:身体はなぜ変わるのか
- 第1〜7回:シリーズ一覧はこちら
- **第8回**:なぜ施術では”考えすぎない”ことが大切なのか(この記事)
- 第9回:「治す」より、”動ける身体へ戻す”
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療効果を保証するものではありません。


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