「施術の翌日、なんか逆に重くなったんですけど……大丈夫ですか?」と言われることがあります。
少し沈みます。
でも続きを聞くと、「その次の日はすごく楽でした」と言われることが多い。
ああ、よかった。これは大丈夫なやつだ。
身体に「余白」がなくなっている
健康な身体には、動くための余白があります。
関節の中の余裕。筋肉同士が滑り合う隙間。組織全体の張力バランス。こういった「動きのクリアランス」があるから、身体はなめらかに動けます。
疲労やストレス、慢性的な負担が続くと、このクリアランスが少しずつ失われていきます。組織同士の滑走性が落ちて、動くたびにどこかが引っかかるような状態になる。
その結果として出てくるのが、
- 動かしにくい
- 奥が重い
- すぐ元に戻る
という感覚です。
表面を緩めても「奥の引っかかり」は残る
表面の筋肉がほぐれると、その場は楽になります。でも深部の滑走不良が残っていれば、身体は元の動き方へ戻ろうとする。
イメージとしては、絡まったロープの表面だけほどいても、奥の絡まりが残っていれば、またすぐ元に戻るような状態です。
だから私は、表面的な気持ちよさだけで終わらせることを目的にしていません。深部の動きにくさへ、きちんと圧を届けることを重視しています。
「深部へ届かせる」ために使うもの
深部まで届かせるために、強く押す必要があるかというとそうではありません。
関節液は非ニュートン流体と呼ばれる特性を持っています。急激で強すぎる力を加えると、粘弾性的な抵抗が増し、組織の防御反応が強まる。強く押しているつもりが、深部に届かずに表面で跳ね返される状態になることがあります。
大切なのは「強さ」より「届き方」です。
私は、施術者自身の姿勢と重心を使って圧を伝えています。手先の力だけで押し込むのではなく、身体全体を通して圧を乗せる。そうすることで、組織が防御反応を出さずに、深部まで変化が入りやすくなります。
施術中に「痛いけど抜けていく」「奥がほどける感じ」という変化が起きるのは、深部のクリアランスが回復し始めたときの感覚だと思っています。
「その場の気持ちよさ」より「翌日の変化」
施術後すぐより、翌日・翌々日の方が身体が楽という感想をいただくことがあります。
それは、深部で起きた変化が、時間をかけて全体に広がっていくからだと思っています。
表面だけを緩めた施術との違いは、そこに出てきます。
……「翌日重くなりました」という連絡が来るたびに一瞬沈みますが、その続きを毎回待っています。「その次の日はすごく楽でした」——これが来ると、届いていたんだとわかる。
次回|第3回:「押す」のではなく、「繋がる」
力で変えようとするほど、身体は防御します。「押す」と「繋がる」の違いを、武道の経験から考えます。
シリーズ:身体はなぜ変わるのか
- 第1回:「そこです」と言われる理由
- **第2回**:なぜ表面だけほぐしても戻りやすいのか(この記事)
- 第3回:「押す」のではなく、「繋がる」
- 第4回:手技療法と鍼灸——届く場所が違う
- 第5回〜第9回:続く
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療効果を保証するものではありません。


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